一人で喚き続ける老人の言葉に耳を傾けてみた

最近、延々と独り言を続ける老人をよく見かける。

昔からよくいるっちゃいるけど、

最近は特に目につくような気がする。

 

裸人が学生のころは

柴犬を連れて電柱に話しかけるおばあちゃんが

近所の名物だった。

「お刺身はな、やっぱ赤身がええねん。

 え?そうそうそう。お醤油?

 うん、ちょっとつけてな!」

その傍で途方に暮れた顔で周りを見回す柴犬。

あんな切ない犬の顔、見たことない。

犬を飼ったことのある人ならわかるだろうけど、

犬ってウ●コするときすっげー切なそうな顔するんだ。

その10倍くらい切ない顔してた。

 

そんな感じで、独語の老人は多い。

けど、真剣にその内容に耳を傾けたことはない。

せいぜい通りすがりに小耳に挟むくらい。

彼らが何を話しているのか、気に留めたこともない。

 

昨日、帰りのバスの中で15分くらい

一人で喚き続けるおじいちゃんと一緒だった。

いったい独り言の老人はどんなことを話してるのか、

せっかくだから耳を傾けてみた。

 

題して、

「独語分析から見る老人心理」

 ~車中で出会った老人の事例より~

 

【ライブ編】

ー老人乗車10分前ー

裸人、バスに乗る。運転席側にある一人掛け席。

すぐに信号待ち。

と、何かリズミカルな音が聞こえてくる。 

腕時計の金属バンドがカチャカチャいうような音。

チャッカッチャッカッチャカチャッチャッ!

チャッチャカチャッチャッチャカチャッチャッ!

周囲には誰も手を動かしている人はいない。

誰だ?何の音だ?

チャッカッチャッカチャカチャッチャッ!

チャッチャカチャッチャッチャカチャッチャッ!

チャッカッチャッカッチャ・・・はいバス動きまぁ~す。

 

犯人お前か、運転手。

たぶん信号待ちのあいだ暇を持て余して

ハンドルか何かを叩いているのだろう。

マイク通して丸聞こえですよ、運転手さん。

 

再度信号待ちを経てチャカチャカを聞いた後

京都で一番人の集まる繁華街から、

ボランティアの乗車整理員にカラみながら

例の老人が乗車する。

 

「はい、どうもありがとう、ありがとう。

ワシ京都に86年住んでるからバスのことは

よく知ってるんだけどね、どんどん街並みが

変わってくからね。昔の面影もないんだ。

はい、どうもありがとうね、ありがとう」

 

86年京都に住んでいる割には京都弁ではない。

老人は杖をつきながら優先席へ。

バスに乗ってからも、言葉が止まらない。

喉がガラガラなので聞き取りづらい。

(※聞き取れなかった箇所は省略しています)

 

「いやー最近は年寄りには住みづらいね」

 

「うん、安倍さんはね、よく頑張ってるよ。

前原?前原は好きだな。京都だからね。

でも、民主党はダメだぁ!ありゃダメ!

菅が民主党をダメにしたんだよ」

 

「ワシが子供のころは、豆ばっか食うてたなぁ。

戦争中だったからね、しょうがないよ。

今はいろんな美味しいものがあって、

チャッチャカチャッチャッチャカチャッチャッ!

今の若者は幸せだよ。戦争も知らんと。

チャッチャカチャッチャッチャカチャッチャッ!

ワシが子供のころは・・・(以下ループ)」

はいバス動きまぁ~す!

 

乗ってきた初老のリーマンにからむ。

老人「先輩!先輩、お仕事お疲れ様!」

リーマン「・・・・・(ペコリ)」

老人「ここ座りなさいよ、空いてるから!」

自分の隣の席(優先席)を勧める。

リーマン「いえいえ、結構です(ニッコリ)」

老人「・・・・・」

しばし沈黙。

老人「ここ、座りなさいよ。仕事疲れたでしょう」

リーマン「いえ、立ってますから(ニッコリ)」

老人「・・・・・」

しばし沈黙。

老人「空いてるんだから座ればいいでしょーが!」

リーマン「・・・・・(無視)」

老人「先輩!あんたに言ってんだよ!」

リーマン「本当に大丈夫です、ありがとうございます」

老人「座ればいいんだよ!ちょっとお姉さん、

 そこどいたげて!先輩が座れないから!」

リーマンの隣に立っていた女性にカラむ。

女性「いいって言ってんだから。大丈夫でしょ」

老人「・・・・・!!!(わなわな)」

しばし沈黙。車内に緊張が走る。

そして重い沈黙を破る運転手。

チャッチャカチャッチャッチャカチャッチャッ!チャッチャカチャッチャッチャカチャッチャッ!

チャッチャカチャッチャッチャカチャッチャッ!チャッチャカチャッチャッチャカチャッチャッ!

チャッチャカチャッチャッチャカチャッチャッ!チャッチャカチャッチャッチャカチャッチャッ!

チャッ・・・はいバス動きまぁ~す

 

「最近の若いモンは、年寄りに席も譲らんと!

情けないなぁ~!恥ずかしいなぁ~!

アンタに言ってんだよ!アンタもだよ!」

近くに座っている若者にカラみ続ける。

ちなみに、リーマンは白髪ではあるが

席を譲らなければならないほどの歳ではない。

ガタイも良く、現役でバリバリ働いてる感じだ。

老人の隣の優先席もガラ空きで、

座っている若者たちに非はまったくない。

「戦争も知らない若者が!恥ずかしくないのかね。

ワシが子供のころは、豆ばっか食ってたよ。

(以下、前述の話ループ)」

 

「青春・・・こんな老いぼれで・・・

チャッカッチャッカチャカチャッチャッ!

情けないなぁ・・・情けないよ・・・

チャッチャカチャッチャッチャカチャッチャッ!

若いころはアメリカにも行ったんだ。

チャッカッチャッカチャカチャッチャッ!

一度だけだけどね。もう一回行きたいなぁ。

チャッチャカチャッチャッチャカチャッチャッ!

でも無理かな、もう86だからね・・・」

チャッカッチャッカチャカチャッチャッ!

チャッチャカチャッチャッチャカチャッチャッ!

・・・・・はいバス右に曲がりまぁ~す、

お立ちのお客様は手すりなどにおつかまりくださぁ~い

 

「・・・立命館学校は、昔は烏丸にあったんだ。

今は千本通にある。随分変わったもんだよ。

ワシが若いころは、烏丸は車庫だったんだ。

そこに立命館学校があったんだよ。

ワシが若いころはそりゃあもう勉強したよ。

頭が痛くなるくらい。でも今の若者は全然だ。

見た目ばっか気にして!全然勉強しとらん!

今の若者はダメだ!戦争も知らんと!

今の日本は平和だよ、今の若者は幸せだ。

安倍さんは頑張ってるよ(以下前原と菅ループ)」

 

チャッカッチャッカチャカチャッチャッ!

「ワシが若いころは、音楽の勉強しとったんだ。

チャッチャカチャッチャッチャカチャッチャッ!

3分の2は音楽。昨日も音楽、今日も音楽。

チャッカッチャッカチャカチャッチャッ!

明日は文学。川島三郎(誰?)が好きだったんだ。

チャッチャカチャッチャッチャカチャッチャッ!

今の若者は本を読まないんだってな。

チャッカッチャッカチャカチャッチャッ!

情けないよ、ホントに。日本人。戦争も。

チャッチャカ・・・はいバス動きまぁ~す

ワシの若いころは豆(以下ループ)」

 

「ああ、もう次で降りないと。

もう家だ。家帰ってもだぁ~れもいない。

家があってもしょうがないよ。

でも帰らないと、他に帰るところがないからね。

おっ、ここのバス停は人が多いなぁ。

みんなこの辺に住んでるんだ。ワシもだよ」

 

そして老人が降りるバス停へ。

「ああ、やっと家だ。やっと帰れる。

ここは降りる人が少ないなぁ。

家に帰ってもだぁ~れもいない。

寂しいけど、でも一人の暮らしも楽しいよ」

降車時に運転手に軽くカラむ。

「今日のご飯はね、お好み焼なんだよ」

ご乗車ありがとうございました~

 

ライブ編、完。